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育成就労制度と技能実習制度との違い

本ページでは2027年4月1日に施行となる「育成就労制度」における、技能実習制度との違い、大きな変更点の詳細、メリットと注意点についてまとめていきます。
育成就労制度 創設の背景と目的
育成就労制度と技能実習制度の違い
 ・ 育成就労産業分野について
 ・ 転籍について
メリットと注意点

育成就労制度 創設の背景と目的

技能実習制度は技能移転による国際貢献を目的としていたが、「(技能実習生の)失踪者数の増加」「権利侵害」などの社会問題や、日本における人材不足という社会状況に対して、外国人労働者の権利を守り、日本の現状に即した人材の育成・確保を目指すというのが育成就労制度創設の狙いであり、人手不足分野における人材の育成・確保を明確に目的に据えた制度となる。

※育成就労制度の概要は以下でご説明しております。
 ▷育成就労制度とは

 

育成就労制度と技能実習制度の違い

先述の社会的背景・制度目的の為、育成就労制度は技能実習制度から様々な点で変更があり、下図が大きな項目である。(他にも様々な内容が変更となる)

育成就労と技能実習の違い

 

育成就労産業分野について

育成就労制度に変わることによる大きな変更の1つに、技能実習制度における「職種」が変わることがある。
育成就労制度で受け入れを行うには、受け入れを行う産業分野が「育成就労産業分野」(特定産業分野のうち、外国人にその分野に属する技能を本邦における3年間の就労を通じて修得させることが相当である分野)に設定されている必要がある。

現状、育成就労産業分野は以下17分野(新設予定の3分野含む)にて検討されており、原則特定技能1号と同じになるが、現時点で「自動車運送業」と「航空」が育成就労産業分野から除外される予定である。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • リネンサプライ(2027年頃 特定技能 運用開始予定)
  • 工業製品製造業
  • 建設
  • 造船・船用工業
  • 自動車整備
  • 宿泊
  • 鉄道
  • 物流倉庫(2027年頃 特定技能 運用開始予定)
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造
  • 外食業
  • 林業
  • 木材産業
  • 資源循環(2027年頃 特定技能 運用開始予定)
    •  

      転籍について

      加えて大きな変更の1つに、技能実習制度で認められなかった外国人本人の意向による転籍を認める、という事項がある。
      育成就労制度での転籍には「やむを得ない事情がある場合の転籍」と「本人の意向による転籍」の2軸があり、「やむを得ない事情がある場合の転籍」の範囲を拡大・明確化するとともに、「本人の意向による転籍」は一定要件のもとで認められることとなる。

      転籍の要件

      「やむを得ない事情がある場合の転籍」とは

      例えば、①各種ハラスメントや暴行などを受けた場合、②重大悪質な法令違反・契約違反などの事情があり、技能実習制度で明確化されていなかったが、育成就労制度にて明確化されることなった。

      「本人の意向による転籍」の一定要件とは

      (1) 同一の業務区分
      転籍先の育成就労実施者(企業)にて従事する業務が、転籍元で従事していた業務と同一の業務区分であること。

      (2) 所定の期間の就労
      転籍元の育成就労実施者(企業)にて業務に従事していた期間が、分野ごとに1年以上2年以下の範囲内で定められる所定の期間を超えていること。(詳細は以下「転籍の制限期間」にて)

      (3) 技能・日本語能力の水準
      育成就労外国人の技能及び日本語能力が一定水準以上であること。
      技能検定試験基礎級等及び分野ごとに設定するA1~A2相当の日本語能力に係る試験への合格が条件となる想定。

      (4) 転籍先が適正か
      転籍先の育成就労実施者(企業)が適切と認められる一定の要件に適合していること。

      上記があり、詳細な要件は今後主務省令等で定められる。

      転籍の制限期間

      転籍の制限期間は、1年とすることを目指しつつも、当分の間、育成就労産業分野ごとに業務内容等を踏まえ1年から2年までの範囲内で育成就労分野別運用方針において設定される。
      2025年9月時点における、各分野での転籍制限の期間と、待遇の向上義務は以下の通り。

      転籍制限期間2年:8分野

      介護、工業製品製造業、建設、造船・船用工業、自動車整備、飲食料品製造業、外食業、資源循環の8分野。
       ※育成就労実施者(企業)は、就労開始から1年経過後、昇給など待遇の向上を図ることを義務づけられる。

      転籍制限期間1年:9分野

      ビルクリーニング、リネンサプライ、宿泊、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、林業、木材産業の9分野。
       (特定技能に新規追加予定の3分野含む)


      転籍制限期間

      第7回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議より(2025年9月)

      転籍の人数制限

      転籍を認める育成就労制度では、過度な引き抜きや都市部への人材の過度な集中が懸念されており、これを防止するため、以下のルールが設けられる見通しである。

      育成就労実施者(企業)が受け入れ可能な本人の意向による転籍者数を、在籍する育成就労外国人の3分の1以下に制限。
      都市圏である東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県の8都府県(※人口の少ない市町村は除く)を指定区域とし、指定区域外から指定区域内への転籍者の割合を6分の1以下に制限。

      下図は、上記の場合の転籍者数・都市部以外からの転籍者数の上限例

      転籍の人数制限

      ※1:別途、受入れ人数枠の上限もかかる。例えば、受入れ人数枠が24人で、非転籍者を既に20人受け入れている受入れ機関の転籍者数の上限は24-20=4人となる。
      ※2:都市部の受入れ機関についてのみ上限が設けられる。

      第2回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議より(2025年2月)

       

      また転籍においてのみだけでなく、地方の育成就労実施者(企業)においては、育成就労実施者(企業)と監理支援機関が共に優良であることを条件に、基本人数枠の3倍まで受け入れ人数枠を増加になるルールが設けられる見通し。
      これも都市圏への過度な移動を抑制し、地方の人材確保に影響が及びにくくすることを目的としている。

      人数制限:都市部

      第2回特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議より(2025年2月)

       

      メリットと注意点

      最後に、育成就労制度への変更に伴う、育成就労実施者(企業)にとっての大きなメリットと注意しなくてはならない点を以下にまとめます。

      育成就労制度メリット 育成就労制度注意点

       

      特定技能を見据えた制度のため、継続して働く場合の長期雇用が見込めるが、その反面、条件があるとはいえ育成就労外国人の転籍が認められるため、人材流出の可能性がでてきます。
      また、日本語能力の基準要件が定められるため、日本語能力の高い人材を受け入れることが可能となりますが、その反面、受け入れ可能な職種(⇒分野)が特定技能1号と原則同じとなるため、技能実習制度と職種が変わり減る可能性があります。
      他には、渡航関連費用や送り出し機関への費用の負担など、育成就労実施者(企業)が負担する費用が増額となる見通しです。これは企業の費用負担が大きくなることではあるが、その分日本で働きたい外国人材の確保がしやすくなることにも繋がります。

      技能実習生制度よりも要件が明確となる分、より適した人材を確保することが可能となるが、受入実施者(企業)にとっては「外国人がより働きたいと思う環境」の整備が必要となると共に、国としても「選ばれる国」になるべく、より発展性のある制度の整備が課題となる。

       

      (※本ページは2025年10月7日時点の情報に基づいております)

       

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